先生
先生の涙を見たのは、初めてだった。

と言うか、大人の男の人が泣いている姿を見るのが、初めてだったのかもしれない。


正直ビックリしたな。


どうしてあげたら良いかわからなくて、先生を包んであげるので精一杯だった。


『愛してる』


泣きながら言った先生の言葉は、私の心にじんわりと染み込んでいった。

いつもより、大胆だったかもしれない。
どうしても我慢できなくて、私は先生にキスをした。

甘いはずのキスは、先生の涙で少ししょっぱかったな。



【好き】


とか


【愛してる】


とかじゃ表せない。
例えて言うならば、心の満たされて居るんだよね。

もう、何が有っても平気だよ。

この気持ちがあれば、どんな苦難にも立ち向かえる……そんな気がした。

唇を離した先生は、熱い瞳で見つめたかと思うと、ヒョイっと私を持ち上げた。

急に体が浮いて、何が起こったのか分からなくなる。

そう、お姫様抱っこをされていた私。



なっ!!!!!



「せんせ?!お…重いから降ろして!!」

必死の抵抗も空しく、そのまま私にキスをする先生。



やだっ…体に力が入らないよ……



気が付いたら、ベッドの上に降ろされていた。


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