先生
私達は教室から出て、ゆっくりと校門まで歩いた。
久しぶりにお母さんと歩く学校。
確か、入学式以来かな。
風が心地よくて、歩いていても苦にならない。
一時はどうなる事かと思ったお母さんの入院も、その後行った検査結果に異常は見られず、すぐに退院出来た。
「無理しないでよ!!」
そう念を押して、お母さんは今でも以前の仕事を続けている。
「良い先生に出逢ったわね」
笑顔で言うお母さんに、『うん』と頷いた。
「早く孫の顔見せるから、お母さんも元気で居てくれなきゃ困るからね」
「そうね」
と、空を見上げながら笑ったお母さん。
「約束」
そう言って、私は小指を差し出した。
お母さんも小指を絡めてきて、私達は女同士の約束を交わしたんだ。
久しぶりに触れたお母さんの手は、温かくて子供の頃を思い出させる。
私達は小指を繋いだまま、家路についた。
青く澄んだ空が、私達を包み込んでいる様だった。