先生
しばし、無言になる柚子。
「そんな事が有ったんだ……」
今だから笑って話せるけど、私も当時は意外と落ちていて柚子も知ってるけど、忘れようと努力した時も有ったからね。
「私達は、障害が有りすぎたんたよ」
私は窓の外を見ながら答えた。
「…ステキだと思う」
「えっ?」
「私も、聡史と強い絆で結ばれたいな」
そう言う柚子は、ものすごく不安気な顔をしていた。
「大丈夫。聡史は、ちゃんと柚子を大切にしてくれてるよ」
私は柚子の手を取り、励ました。
その言葉は、ただの勢いじゃない。
聡史は、ちゃんと柚子の事を考えてあげているって思うの。
聡史の事だから、多分口では何も言わないだろうけど、ちゃんと柚子を支えて居るのが分かるんだ。
だって、お互い受験勉強が忙しいのに、わざわざ『走りたかったから』って理由で柚子の家まで行かないでしょ?
柚子は当事者だから気づかないだけで、私から見たら、聡史は良い彼氏だと思うんだ。
「そうかな?」
固かった柚子の表情が、少しだけ緩む。
「私が嘘ついた事有る?」
「ううん、無い」
「それが答え」
私は笑顔で言うと、柚子もつられて笑顔になった。