先生

慌てて先生に電話をした。
耳越しに電話が鳴る音が聞こえ、もどかしくなる。


早く取って。


―――ガチャ

『先生?』

『どうした?何か有った?』

先生の声を聞くだけで、少しだけ落ちつけた私は単純かな?

『いや、特に……』

『うそだ。その声は何か有っただろ?』

先生は私の声を聞いただけで、私の気持ちが分かっちゃうんだね。

『無いよ。先生の声が聞けて安心した』

私は素直にそう話した。
すると、少し間があった後

『……純那、今家?』

『うん、そうだけど』

って先生。
周りがうるさかったかな?


『会いたい』


思いがけない一言に、一瞬言葉を失った。

『私も会いたいけど…ダメだよ』

理性の塊。
だって、バレたら先生クビになるもん。

『純那、愛してる』

『私もだよ、先生』

そんな事言われたら、会いたい気持ちが大きくなっちゃうよ。

理性と感情の狭間で、不安定に揺れ動いている私の心。


辛うじて理性を保ちつつ、先生との電話を切った。

< 429 / 444 >

この作品をシェア

pagetop