せーしゅん。【短編集Ⅲ】
「“青春“って春なんだろ?」
「えっ、そうなの?」
僕よりも遅くその難題にぶつかったのに
何かを知っているキヤを見て驚いた。
キヤはズボンのポケットから四つ折りになった
課題のプリントの“青春”という漢字を指差した。
「ほんとだ」
これは僕の注意不足。
やはりスタート地点は一緒だ。
「でもさ今の季節って春だけど
青色じゃなくて桃色だよね」
上を見上げると青空をバックに桜の花がなびいていた。
僕は舞降りる桜の花びらを一枚キャッチした。
ナイス、と隣で笑うキヤ。
すると思い出したように
あっ、と声を発した。
「明日、卒業式だ」