―虎桜伝 K O O U D E N―
其の壱 祭囃子
「あーぁ…すっかり暗くなっちゃった」
その日、あたしは部活が長引いて帰りが遅くなっていた。
日の長い夏とはいえ、辺りはもう真っ暗。
「そうそう、壱守先生に電話しとかなきゃ」
この春、あたしは晴れて高校生になった。
そしてそれと同時に、
生まれてから今まで暮らしてきた壱守学園(イチモリガクエン)を去った。
壱守学園。
町の小さな孤児院。
あたしはそこで育った。