―虎桜伝 K O O U D E N―
ザアッ…!
一歩踏み込んだ瞬間、目の前にさっきとは違う景色が広がった。
あの全てを塗り潰すような暗闇はどこかへ消えて、
一本のやたらと背の高い街灯が、辺りをやんわりと、優しく照らしている。
そして、一軒の店がその灯りを浴びるようにひっそりと建っていた。
「珍骨董屋…竜爺…?」
立派に彫られた、店の名前を読み上げる。
平屋建ての古びたお店。
昔の武将達がこぞって建てたお城のような風貌が、
この店に威厳じみた雰囲気を持たせている。
よく見ると、街灯はガス灯で。
教科書でしか見たことのない、明治時代の西洋風の街灯だった。