―虎桜伝 K O O U D E N―
「何か用かね?」
「………っ!!」
心臓が跳ね上がった。
バッと後ろを振り向くと、その拍子に鞠を落としてしまって。
すぐ後ろにおじいさんが杖をついて立っていたのだ。
どうして気がつかなかったんだろう?
あたしは予告なしの店主の出現に言葉を失った。
おじいさんが何とも不思議そうにこっちを見てる。
無言の2人の間を鞠がコロコロと転がった。
「おや、これは?」
鞠を拾い上げておじいさんが聞いてきた。
「え…と、着物の女の子が落としてったので、その…届けに」
しどろもどろに答えて。
壱守先生が聞いたら嘆きそうな、頼りない返答。
「あぁ、座敷わらしか」