―虎桜伝 K O O U D E N―


「お嬢ちゃんが、“本当に”望んでいるものは、手に入るかどうか…」


私が“本当に”望んでいるもの?


それが何なのか、私にも分からない。


けど、今は…


「今は、虎門を連れ戻したいんです」


おじいさんに向かって、ハッキリ答えた。


少し黙ったあと、おじいさんが目を開き…


「分かった。では…」


おじいさんが私の額に骨張った手を当てて。


瞬間、意識が遠退いていくのを感じた。


目蓋が閉じる向こうで、


桜の花びらが舞うのが


見えた気がした。







< 20 / 26 >

この作品をシェア

pagetop