―虎桜伝 K O O U D E N―
ぽーんっ
女の子が放り投げた毬が大きな弧を描きながら空を仰ぎ、
ほんの一瞬、毬が満月とぴったりと重なって、
女の子は満足そうに頬笑んだ。
「あっあの…」
こんな時間に一人で遊んでたら危ないよ?
そう言おうと思ったけど、
あたしに気付いた途端、女の子は毬をポトリと落として、
向こうに一目散に走って行ってしまった。
「ちょ…ちょっと待って!毬落としたよ!ちょっと!」
あたしも急いで追い掛ける。