色葉
数研には机にうつ伏して寝ている千景先生がいた


えぇっと確かこの人『おはようちーちゃん。起きて』って言わなきゃ起きないって


・・・・・・・・・・・・・・・無理無理無理無理。無理!!!!


なにちーちゃんってなんの冗談!?


こうなったらやってやる。新たな合い言葉を発見してやる


数分後


この努力が無駄だったことがわかった


起きない


まさか朝と同じように強い衝撃を与えるわけにもいかない


だって今から罰を受けるんだし、千景先生に限って言えば心証はそれほど悪くない


ならそのままにした方が甘くなるはず


殴ってその心証がパーになったら困る


どうしよう。本気でこのまま帰りたいが、罰則点増えるのは嫌だ


はぁ。できれば誰にも聞かれたくない


耳元まで行ってあの言葉を口にする


「お・は・よう。ちー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちゃん。おきて」


ここまで棒読みした経験はないってくらいの棒読み。


それでも効果があったらしい


肩にぐいっと手が回され、引き寄せられる


「もう少し感情入れられないの?」


「できるはずがないでしょ!!!恥ずかしい」


「そう。じゃあ、演技指導をしてあげようか?」


甘い声が耳元で囁かれる


「すいません。努力するからやめてぇ~」


肩に回された手を外された瞬間バッと離れる


「ふふふ。女の子みたいな悲鳴あげちゃって。」


「そういう冗談やめてください!!!」


「あら?冗談が嫌なら本気でする?」


やぶ蛇だった。口をぱくぱくと開け閉めするだけで言葉も出ない


「クスクス。本当にいい反応するのねぇ。からかいがいあるわ。さて、行きましょうか」


そう言って先頭を切って数研から出て行く千景先生


行くってどこへ?


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