色葉

番外:二人の位置

時間は少し前に戻る。


石動が沙織に胸ぐらを掴まれている朝の生徒会長室では二つの人影があった


一人はこの部屋の現主である藤木静。


もう一人は扉の前でうつむいている雛森華


「何の用ですかぁ~?雛森くんがこんなに朝早くからここにくるなんてぇ~珍しいですねぇ~」


「昨日のことを謝りたくて、すみませんでした」


静かに響く声はしかししっかりと届いた


頭を下げた華にはわからなかったが、華を見る静の目がまぶしいものを見るように細まり、気を抜いたように顔が緩む。


しかし、その表情は一瞬後には不真面目で、不謹慎な二へラーッとした顔に移り、未だに頭を下げたまま華に声をかける


「気にしなくていいですよぉ~。別に怒ってませんからぁ~。でぇ~それだけですかぁ?」


本題を言いやすいように水を向けると言いづらそうしながらも、ある種の強い決意を感じさせる目で真っ直ぐ静を見る


「副会長を辞退『認めない』」


華が言い切る前に静がはっきりとした口調で却下した


「第一副会長の辞退は認められていない。」


「知っていますでも私は、もう無理なんです」


最後は蚊の鳴くような声になったが静には全て聞こえていたらしい


「何が無理かは知らないが、仕事ならオレが全部こなすから『それが嫌なんです』」


「確かに私は貴方のようにはできません。でも、私は貴方の役に立ちたいんです」


「だったらやめるとか言わないでくれ。それが一番ありがたい」


その言葉に悲痛と言える顔をする華に会長は一切の感情をみせない


「さぁ~て。もう時間ですねぇ~。ホームルームに遅刻するのはよくないでぇすよぉ?」


「私、だめですか?」


消え入りそうな不安に揺れる声


「主語がなければ答えようがない。仕事の話なら効率の問題だ。オレが一人でやった方が早い」


「そういうことではないんです」


華のその声は届いてないようで静は何も答えず、労働に勤しんでいた


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