色葉
きっと初めからこれを言わせたかったに違いない


いきなり立ち止まったためオレの方が前に来てしまった


振り向いた時の衝撃を何と言えばいいのか


頬を少し赤く染め、左手で口を覆い、恥ずかしそうに上目使いでオレの反応を窺っている姿は過剰なほどに可愛い


理性を総動員して目を外す。あのまま見ていてはあの小悪魔の思うつぼだ。


オレはあの姿の前に浮べた意地の悪い笑みをしっかり見ていた。


見ていたから動けたってのが正しいが


何だあの目を引付ける雰囲気


そうオレはこれで限界だった


だから次の攻撃になすすべなく捕まった




「石動くんだからだよ?」


耳元でしっとりと優しく響く妖艶な声を聞いたとき顔が赤くなるのを止められなかった




初めから罠だった。



多分あの笑みを見せたのもわざと


逃れるために顔を背ける反応をも予測して


一番効果的な攻撃を狙っていた


はめられて気付いたがもう遅い


赤くなったとわかったときにしゃがみ込んだので上から


笑いをかみ殺した声か聞こえてくる

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