色葉
ここで悲劇が起きた


簡単にいえば清が復活したのである


杉崎清


万年発情期の異名を持つ人物


雛森先輩の時は雛森先輩の登場に誰もが意表をつかれ反応できなかった


そうあれは敗北だったのだ


たまたま雛森先輩が武道の心得があったから勝利のように見えただけだ


だが、今回はどうだ


部活は卓球部。荒事になれていそうな雰囲気もない


さらに見た目は小学生に見えるが、愛梨先輩も可愛いという部類に確実に入る


愛らしい顔立ちに大きな目。表情がころころ変わるのは見ていて和む


清は確実に飛びかかるだろう


皆それは共通認識らしい


そして


愛梨先輩を守らなければならない


あの笑顔を曇らせてはならない


これも共通認識のようだ


皆の警戒心が高まっていくのがわかった


これは失敗できない


数人にいたっては既に臨戦体勢に入っている


筆頭は長であろう。いつの間にかオレの筆箱を片手に持っている


・・・・・・・・・・・・うん。なんでオレの筆箱なんだろう


それにしても、清


下手に動けば今回命がないかもしれないぞ


そのことに気付いているのかいないのか


清はその手を愛梨先輩に伸ばした


ヤバイぞ。空気が一気に変わった


警戒から臨戦に、臨戦から必殺に


これ以上の刺激は洒落にならない


やっぱりみんな雛森先輩の時に反応できなかったのが相当悔しかったんだな


清は手を止め、愛梨先輩に向けて指を指す






「誰の妹だ?小学生を学校に連れてくるなよ」


その言葉に教室の張り詰めていた空気が緩む


よかった


清はどうやらそっちには興味がないらしい



< 55 / 178 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop