色葉
数研には担任が一人パソコンに向かっていた


「宮下先生」


呼びかけると背を伸ばし怠そうに目を向け


オレの顔を見るや否やそれはもう嬉しそうに微笑んだ


退屈で仕方ない時にお気に入りのおもちゃを見つけた子供みたいな笑み


嫌な予感しかしない表情


「ふふ。私に会いに来てくれたの?石動くんって案外マメなのね。ポイント高いわよ」



しっとりと甘く響く声。



この人のペースにのせられてはいけないと思いつつも反論してしまう


だって反論しなきゃ認めたみたいじゃないか


「宮下先生のとこに来たのはそういう意味じゃありません」


「そういう意味ってどういう意味なのかなぁ?」



罠にかかった獲物を見るような目



「私はてっきり宿題のわからないとこを聞きに来たんだと思ったんだけど」


やられた。さっき恥をかかされたから警戒して墓穴を掘った


「さぁ~て。石動くんはど・う・い・う意味を想像しっちゃったのかなぁ?」


妖艶な、そして眩惑なまでの微笑み


カーッと赤くなる顔


あの顔を直視できずに目を反らす


「ふふふふふ。立ち話もなんだし座ったら?」


頭を冷やす時間も欲しかったのもあり


何も考えずに言うとおりに宮下先生の隣に座る


「さて、追及するのもおもしろくていいけど、素直に隣に座ってくれたし。条件によってはやめてあげよう」


ジトーッと非難がましい目を向けるが相手は全く意に介した様子もない


「条件は簡単だから安心しなさい。千景先生って呼ぶこと」


「・・・・・・・・・・・・・・・・なんでそんなこと?」


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