色葉
「全く。素直じゃないんだから」


「千景先生が何を言ってるのかさっぱりわかりません」


「そう?」


そう言って目線をオレから外し、ニヤリッと人が悪い笑みを浮べた


なんだ?なにが来る?


警戒心を引き上げ、発言にも細心の注意を払う


「そう言えば石動くんは何しに?」


「文句を言いに来たってさっき言ったじゃないですか」


「文句・・・・・・・・・・・・先生の言うとおりにしたら失敗したって文句?」


「・・・・・・・・・報告かもしれませんね」


それにしてもなんだ?


何か違和感がある


「千景先生に会いに来たとも言える?」


さっきの愚は冒すまい。


下手に取繕えば手痛い反撃にあうのはさっき経験したばかり。


「そうとも言えるかもしれませんね」


その瞬間に千景先生はかすかに笑んだ。目の前にいるオレがやっとわかるくらいの小さな笑み


たぶん目の前にいなかったら気付かなかった


その時唐突にあることに気付いた。


この千景先生は教室の時の中性的で怠け者のあの千景先生だ


だが、その意味するところがわからない


何で今この状態なんだ?暇つぶしか?


「この場面を良識ある人が見ればどう見えるかな?」


「どうもこうも別に不思議なことは何もないですよ」


「そう。じゃあ、好奇心旺盛な人が見たら?」


千景先生の目線はオレを突き抜け後ろに向けられる


その目線を追えば、今まさに逃げようとする女生徒の後ろ姿


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