色葉
「えぇ。貴方様に『ちょっと待った』」


「話の途中に割り込んですまない」


お気になさらずどーぞってのが雰囲気で伝わってくる


「貴方様はやめてくれ・・・・・・・・・・・・ください。なんだか妙に居心地が悪・・・・・・・・・・・・・他人行儀な感じがしてよろしくない」


あぁ。うん


慣れない丁寧な言葉なんてこんなものさ


意識しなかったさっきまでの方が自然にできてた気がする


「わかりました。石動様とお呼びしましょう」


それでも少し身動ぎしてしまうが、まぁ貴方様よりマシだなとオレは思ったが


どうも事態はそんなレベルじゃないみたいだ


園原さんが顔を蒼白して「お嬢様!?」って裏返った声を出した


何かオレ大変な事を?


「いいのよ。美鈴。お願いするのはこちらなんですから」


「しかし、生家に知られでもしたら『美鈴』」


狼狽える園原さんを鋭いエリサの声が射貫く


「いいと私は言いました」


「・・・・・・・・・・・・・・・石動様」


怨嗟の声と暗い光を湛える目


やっぱりオレ何かしでかしたんだな


「エリサお嬢様が石動様とお呼びしていることを誰かに漏らしたら『大丈夫です。誰にも言いませんから』」


エリサは呆れ声でたしなめるも「こればかりはお譲りいたしません」と園原さん


「まぁいいでしょう。石動様、私は古川つばささんと恋仲である『待って』」


「だれが恋仲!?どこからそんな事実無根の話を!?」


「違うのですか?」


そう言ってエリサは園原さんに目線を向ける


「いえ、相違ありません。石動様の中学時の御学友が皆一様に証言してくださいました」


あいつらろくなことをしないな


って調べたのかそこまで

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