桜の嵐


 こんな不意打ち、予想外だよ。



「あの……失礼します」
「あ、おう。また――」



 まだ何か言い掛けた溝口君をそのままに、走り出した。


 チカチカ、危険信号が点滅してる。

 淳兄と同じ名前の溝口君。


 関わっちゃいけない。





「美桜ー!またなー!!」



 背後で私の名を呼ぶ溝口君の声が響く。


 その声に、胸が締め付けられたように、痛んだ。


 何故こんなに、心が波立つのか。




 ‘ざぁぁぁぁ’

 足元から風が舞い上がる。
 渦を巻いて散り落ちる桜。



 ‘ダメだよ、美桜’



 淳兄に責められているような、気がした。


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