桜の嵐
最後だから、


 傷みとともに刻まれた愛しい人。

 忘れちゃいけない、その人。



 何故だろう。
 最近、思い出す顔がぼやける……






「あ、美桜見ぃっけ☆」



 私を視界に捉えて嬉しそうに笑う溝口君に、溜め息を吐いた。



「溝口君、呼び捨て止めてって言ってるのに」


 読んでいた本を閉じて、目の前に座った彼を睨む。



「なんで?いいじゃん」


 よくない。

 そんな無邪気に笑わないでよ。



 不機嫌な私の何がおかしいのか、溝口君はいつも笑顔だ。


 そして決まって、こう言う。


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