桜の嵐


 観察されていた事に気付いた溝口君が、ん?とはにかむ。



「何か付いてる?」


 白い歯を覗かせて柔らかく微笑まれると、胸の奥がザワザワする。



「別に、何も」



 これ以上彼と過ごすのは都合が悪くなる気がして、また本を開いて集中することにした。

 そうすれば、溝口君もいつの間にかどこかへ行くから。

 男女共に人気がある溝口君が、わざわざ私みたいなつまらない人間と一緒にいる事ないんだし。



 そう、いつもは。





「……どうして、ずっとそこにいるの?」


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