桜の嵐


「―――え…?」



 瞬間、風が坂の下から吹き上げた。

 枝先と葉を揺らす木々のざわめきが響く。


 乱れる髪を押さえながら、溝口君を見つめた。



「美桜は、ここで泣いてたんだ……」



 言われて、ドキリと胸が鳴った。

 髪を押さえていた手が、そのまま髪を握り締める。



 悲しそうに眉を下げて微笑む溝口君から、目を逸らせなかった。



「ど……して――」



 それは、まだ。

 桜の花が色濃かった、入学直前の4月の始め。


 資料を取りに来た帰りに思わず包まれた桜吹雪。


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