桜の嵐


 ‘よく来たね、美桜’



 淳兄に、そう言われた気がして。

 立ち止まった。




「あまりにも儚いから、最初は幽霊かと思ったよ」



 トクン、トクン、



 熱を持って鼓動する胸に、警鐘が鳴る。


 ―――ダメ。

 これ以上、聞いちゃダメ。


 分かっているのに、足が地面に貼り付いたように動かない。



「だからクラスで美桜を見つけた時、心底ホッとしたんだ。

 ――好きな子が生きていて、よかったって……」



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