桜の嵐


 ‘ざぁぁぁぁ’



 封印した心が、波立つ音。


 それは嵐のように、私を乱して全てを無にしてしまう。




 ひらひら
 ひらひら。


 あの日の桜が、過る。



 私があの時、気付いていたら。

 淳兄に、違う言葉を掛けていたら。


 二人きりで、逃げていたら―――、


 今とは違う未来が、待っていたのかもしれない。




「……分かった。大丈夫だよ、行かないから…」



 それだけ告げて、電話を切った。


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