桜の嵐


「だめ、だめだよ…」



 うわ言のように呟く私に、溝口君が小さく笑った。

 耳元をくすぐる、息。




「好きだよ、美桜。

 ―――ずっとずっと、俺のそばに、いて……?」





 ――ああ、ダメ……

 引き返せなくなる……




 溝口君の言葉は、染み入るようにあたたかくて。

 凍えるように頑なで冷たかった私の心を、満たすように広がる。




 何かが、弾けた音がした。




「私で…いいの……?」



頬を伝う涙が、熱い。


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