秘密な私の愛しき人
琉ちゃんの声はいつも通りだ。

いつも通りだからこそ悲しい。



「りゅ、琉ちゃん!」


『ん?なんだ?』



私は気になっていることを遠回しに聞いた。


「今日の会社どうだった?」


『会社?いつも通りだよ』


「そうなんだ。昼に忘れ物届けに行ったけどなんでいなかったの?」



琉ちゃん。お願いだから真実を言って!



『わざわざ持ってきてくれたのに悪かったな。そのときは仕事が立て込んでいてデスクを離れられなかったんだ』



「そ…そうなんだ…」


私は首にかけてある婚約指輪を握った。



嘘をつかれた…

心の底では信じていたのに…



「それじゃあ」



そう言って私は電話を切った。


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