Love Step
「バイトが終わったら付き合ってくれない?」


背後から言われて杏梨は足を止めた。


なんで……?


振り向きポカンと峻を見る。


「いいだろ?バイト終わるの待っているから」


「だめです!」


ぴしゃりと言い切るが峻の笑顔は変わらない。


「いいじゃん 夕食奢るから」


だからなんで……?わたしと?


杏梨は大きくかぶりを振った。


「このあと、予定ないんでしょ?」


何であきらめてくれないのぅ……。


困った顔になった時、雪哉と彩が近づいてくるのが目に入った。


「ゆきちゃん……」


「杏梨、どうした?」




彩のスタイリングが終わり受付へ向かう途中で杏梨の側にいる峻くんを見つけた。


親しげに笑いかける彼を見て思わず離れろと言いたくなる。


「あら、杏梨ちゃん こんにちは」


雪哉の隣にいた彩が杏梨に気づき声をかける。


「こ、こんにちは」


「峻、杏梨ちゃんと何の話をしていたの?」


彩が不安げな杏梨を見てから峻に聞く。


「夕食に誘ったんだけど断られた」


彩は耳を疑った。


峻が断られるなんて……。


峻の残念そうな言葉を聞いた雪哉は「さすがだ!杏梨」と思わず声が出そうになった。


「あら、峻が断られちゃうなんて」


きれいなローズピンク色に塗られた唇でフフッと笑う。


「杏梨、良いだろ?雪哉さんからも言って下さいよ」


峻は雪哉に助けを求めたが勧めるわけにも行かない。


雪哉本人が一番行って欲しくないと思っているのだから。


それに峻が杏梨を呼び捨てで呼んだ事にも内心腹がたつ。


「雪哉?」


黙っている雪哉に彩が名前を呼ぶ。


「いや……峻くんは芸能人だからね 高校生の杏梨を連れ出すのは望ましくない 勧められないな」


杏梨が峻の隣で雪哉の言葉にコクコク頷いている。






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