Love Step
そんなの見ていれば分かるよ……。


「だから姉貴はお前がすごく気になっているんだ」


「……」


「だからな?俺たち付き合わないか?」


「えっ?」


聞き間違えかと思った。


耳を疑って峻を見ると端整な顔にニコニコと笑顔を浮かべている。


「今……なんて言ったの……?」


「姉貴を安心させてやりたいんだ 俺たちが付き合えば安心する」


「なに言ってるの?そんな理由で付き合おうって言うの?」


杏梨は目の前のウーロン茶をおもいっきり峻にかけたくなった。


「……それもあるけど、俺 お前 好きみたいなんだ」


へっ?好きみたい……?なんで他人事のように言うのぉ?


こんなイケメンに告白されたら天にも昇る気持ちになるのだろうけど、わたしはゆきちゃんが好きだから返って迷惑だ。


「付き合おうぜ?」


顔を近づけてくる峻から逃げるように頭を後ろに引く。


「ちょ、ちょっと待って!数回しか会った事ないし……どうして好きって?」


「好きになるのに時間は要らないよ」


峻がにっこり笑う。


いえ……必要です。

少なくともわたしには必要なの。


対面に座っている雪哉は杏梨と峻の会話が弾んでいるように見えた。


バラード曲からロックテイストな音楽に変わり2人の会話が聞こえない。


しかも彩の会話は尽きることがない。


あいまいに相槌を打ちながら神経を杏梨に集中させる。


「……次回作の役でね?髪型をどうしようかと監督さんと……雪哉?」


彩は雪哉が乗ってきそうな会話を選んだのに、雪哉の視線が杏梨の方に移ったのを見て呼んだ。


注意を引いた時、雪哉がポケットに手を入れて携帯電話を取り出した。


雪哉の携帯電話が振動したのだ。


「悪いね、ちょっと電話をかけてくるよ」


誰ともなく断ると雪哉が立ち上がった。


「私もお化粧室へ行ってくるわ」


雪哉の後を追いかけるようにして彩も出て行った。




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