Love Step
「杏梨だけ置いて俺は先に帰る」


「え……?」


「杏梨は夏休みいっぱい、向こうにいるといい」


「っ!嫌だよ!一緒に帰るっ!」


大きくかぶりを振る。


「俺と一緒に帰ったら貴美香さんが寂しがるよ」


泣く子をなだめるような口調で言われて雪哉を睨む。


「杏梨……」


俺も迷ったんだ。

仕事を調整してもせいぜい4日しか休めない。

アメリカに行くのをやめようと思った時、父さんから電話があった。

杏梨だけでも来られないかと。

慣れないアメリカの生活に貴美香さんはホームシックにかかっているらしい。



雪哉はその事を頬を膨らませている杏梨に言った。


杏梨はしばらく黙り込んだ後、「行く」と言った。


電話の時は明るかった声だったのに……。


ママの事を考えると胸が痛くなった。


自分の事しか考えなかった事に罪悪感を覚えた杏梨だった。




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