Love Step
今日最後の予約のお客様が終わると8時を回っていた。


お客様を送り出した雪哉は駐車場に白いワンボックスカーが停まっているのに気がついた。


白いワンボックスカーは彩のマネージャーの車だ。


雪哉が一人になったのを見計らって車の中から彩が降りてきた。



「雪哉さんっ!」


「彩、どうしたんだい?」


「さっき電話で雪哉さんのスケジュールを聞いたらお客様の接客中だったので、車の中で待っていたの」


大きな紙袋を抱え込みながら彩はにっこり微笑む。


大輪のバラのような笑みだ。


「どうぞ、中へ入って」


雪哉は店のドアを開けるとオフィスに案内した。



ソファーに腰をかけると彩は紙袋から重そうな重箱をテーブルの上に置いた。


「?」


「お夕食を作ってきたんです 杏梨ちゃんがいると言っても高校生だし、作るものも限られちゃうかなって……」


彩はどうやって渡したら良いか前もって考えていたので、セリフのようにすらすらと言葉が出た。


可愛らしく、雪哉を思っているニュアンスを含めて。


「……ありがとう」


間が空いたのは困ったなと言う気持ちで、お礼の言葉が出なかったのだ。


「喜んでくれて嬉しいです♪栄養面もばっちりなのでたくさん食べてくださいね」


そう言いながら古風な御所車の描かれた風呂敷の結び目を外す。


蓋を取ると一段目には煮物や焼き魚、ポテトサラダ、から揚げなどが入っており、二段目には錦糸卵が眩しい豪華なちらし寿司が入っていた。


「すごいな……」


「お料理教室に通っていた時期もあったんです 少し食べてみませんか?」


用意周到で紙袋からお箸と小皿を出す。




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