Love Step
「無理をしないでいいんだ それに頑張るものでもないだろ?」


柔らかい髪に指を入れると黒目がちの大きな瞳が雪哉に戻ってくる。


「……それでも頑張るっ」


「……そうだね 一緒に頑張ろう?行ってくるよ」


昨日の情熱的なキスで少し腫れた唇に軽くキスを落とすと杏梨から離れた。


「いってらっしゃい」


「杏梨も気をつけて行ってくるんだよ?迷子になったら携帯に電話して」


「え……迷子になんかならないよ?」


「そうかな?杏梨は方向音痴だから心配だな」


付き合ってあげたかったのだが、予約が詰まっていて一緒に行けそうも無かった。


パスポート申請も夏休みは混むと聞いているので早い方が良い。


「大丈夫だよ♪」


わたしがどんな状態の時でもゆきちゃんは優しい……。

仕事に行く前にちゃんと話せて良かった。

わたしにはゆきちゃんしかいない。

ゆきちゃんが大好き……こんな生活がずっと続くと思っていた。


積み重ねたブロックがだんだんと崩されていく……。

そんな感覚を覚えたのはいつの頃からだっただろう。

……この時から少しずつわたし達の関係は崩れかけていたのかもしれない。


雪哉を見送った杏梨は落ち着かなかった。



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