Love Step
「ゆずるさん、もしかしてゆきちゃんに髪の毛をやってもらいに来たんですか?」


感慨深げに成長した杏梨を見ていると、小首を傾げてゆずるが顔を出した理由を聞いた。


「まさか、雪哉に?……恥ずかしいでしょ?」


そう言ってきれいに微笑む姿は女優、冬木 ゆずるなんだなぁ~と感心してしまう。

毎日こんなにきれいな奥さんを見ている旦那様の健太郎さんは幸せ者だなぁ。

あ……でも毎日ゆきちゃんの顔を見られるわたしも幸せなのかも♪


「……ちゃん?杏梨ちゃん?」

「あ……」


自分の世界に浸っていたようで、ゆずるさんが何を言ったのか分からなかった。


「なんか良いことでもあったの?顔がお日様みたいにほころんでいるわね?」


「え……そ、そんな事ないです……」


ゆずるの指摘に顔が一気に赤くなる。


一昨日の夜の事は思い出したくない出来事なのに、それでも優しかったゆきちゃんに安心しているわたしがいる。


「そうだ!どうしてゆきちゃんだと恥ずかしいんですか?」


わたしはゆきちゃんに髪をいじられるとすごく気持ちいって思っちゃうのに。


「姉弟ってそう言うものなのよ 今日は新しいネイリストが入ったからって呼ばれたの」


「もしかしてカタログ撮影のモデルに?」


今日は朝からカメラマンさんや雑誌編集者さんが来ている。


「そんな所でいつまで立ち話をしているつもりなの?暑いだろう?」


雪哉の声に顔を入り口に向けると戸口に寄りかかり涼しげな表情で2人を眺めていた。




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