Love Step
「たしか、杏梨ちゃんだったわね?貴方もモデルさん?撮影は2人って聞いていないけど……」


杏梨に視線を向けた琴美は困った顔をした。


「え……?え……っと、わたしは……アル―」


「黒田さん、杏梨は俺の妹です 夏休みの間のアルバイト」


雪哉が簡単に説明をした。


「あら、雪哉さんとゆずるさんの妹さんなんですか 美形家族なんですね」


「ち、違うんです」


杏梨が慌てて言う。


「え?」


「親たちが再婚したので」


首を傾げた琴美に雪哉が付け足した。


「まあ!そうだったんですか 素敵なお兄様とお姉様が出来て良かったわね?杏梨ちゃん」


そう言って微笑む。


だが、心の中では見るからに2人に愛しまれている杏梨に憎しみを感じていた。


「え……は、はいっ!」


返事をしつつも淡い色から濃い色へとグラデーションに並んだマニキュアの瓶に視線が行く。


「杏梨ちゃん、興味があるの?」


「マニキュアってすごくきれいだなって思ったんです」


素直な感想を述べる杏梨に雪哉は優しい眼差しで聞いている。


ゆずるも同様な表情だ。


この子だけのうのうと幸せに暮らしているなんて許せない。


琴美は心拍数が上がっていくのが分かった。


興奮状態を治める為に、杏梨の指の爪に視線を落とした。


「仕事が終わったら爪を整えてあげるわ 是非いらしてね?」


え……いいのかな……。


杏梨は言ってもらえて嬉しかったが、どう返事をして良いのか分からなくて雪哉を見た。


「やってもらうと良いよ」


「ありがとう♪ゆきちゃん 黒田さん 仕事が終わったらお願いします」


ペコッと頭を下げると、仕事の邪魔をしないように部屋を出た。




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