Love Step
階段を上がってきたのは峻だった。


ハーフっぽい綺麗な顔立ちの女の子と手を繋いでいた。


彼女さんだ。


甘い雰囲気が漂っていて絶対にデートに違いない。


峻の名前がとっさに出てしまったが、そのまま峻の横を通り抜けて階段を降りようとした。


杏梨なりに彼女連れの峻に気を使ったのだ。


峻はいきなり杏梨の姿が目に飛び込んできて動揺した。


どうしてお前がここにいるんだよ。


自分の横を通り過ぎようとする杏梨を目で追った時、



「……雪哉さん」


杏梨の後ろから姿を見せた雪哉を見て峻の表情が変わった。


「峻くん、あの人もしかしてカリスマ美容師の雪哉さんっ?」


気まずい雰囲気が分からないのか、梨沙が目を真ん丸くして峻の腕を引っ張った。


「あぁ……」


峻はじっと雪哉を見つめ、目をそらさずに答えた。


「こんばんは 峻くん こんな所で偶然だね?」


「……」


峻の雪哉を見る目は見つめていると言うよりは、睨み付けていると言った方が良いのかもしれない。


「ゆ、ゆきちゃん、行こう?」


杏梨が少し降りた階段を登って来て、雪哉の手を握った。


峻の様子が気になるのだろう。


杏梨の握られた手はしっとりと汗ばんでいた。



「あぁ、行こうか」


杏梨の不安そうな顔を見て安心させるように雪哉は微笑みかけた。


「峻くん、彼女さん 失礼するよ」


雪哉は峻と彼女に言うと先に下りようとする杏梨に従い、階段を降りはじめた。



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