Love Step

企み

「失礼します」


ネイルサロンのドアをノックして杏梨は中へ入った。


「カップ下げますね」


杏梨は一言、琴美に断ってからお客様の飲んだコーヒーカップをトレーの上に置いた。


「ありがとう、あっ!杏梨ちゃん、今日のお昼はお弁当持ってきたかしら?」


思い出したように琴美が言う。


「え?いいえ……」


「ちょうど良かったわ♪私、お弁当を作ってきたの 良かったら一緒に食べない?」


「え……っと……」


杏梨の休憩時間は12時15分から13時15分までと決まっている。


琴美のお客様がその時間に入っていれば一緒に食べる事は出来ない。


「杏梨ちゃんのお昼休みは12時15分からよね?その時間は空いているからこっちを気にしなくて良いわよ?2人分作ってきちゃったし」


「ありがとうございます 嬉しいです♪」


「じゃあ、時間になったらここに来てね?」


「はいっ!」


杏梨はトレーをかかえて部屋を出た。



琴美が作ったのはフランスパンのサンドイッチだった。


中身がローストチキンやハム、きゅうり、トマト、たまごと具沢山のサンドイッチ。


見た目も美しくよだれが出るくらい美味しそうだ。


「フランス仕込みのサンドイッチよ たくさん食べてね?」


ポットにアイスカフェオレも用意されていて至れり尽くせりの昼食だ。


杏梨は幸せそうに琴美に笑った。


「頂きますっ♪」


大きなサンドイッチをほおばる杏梨を見て琴美は心の中でほくそ笑んでいた。


たくさん食べるのよ?


「すごく美味しいです」


「褒めてくれて嬉しいわ~ また作ってくるからね?」


琴美もにっこり杏梨に笑い返した。


「ありがとうございます 楽しみにしています」


ほんと、礼儀正しい子ね 大事にされていたのが良く分かるわ。




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