Love Step
どんどん気分が悪くなっていく……。


「杏梨ちゃん、まだ洗っていたの?」


カーラーを洗うように杏梨に頼んだスタッフの女性が横に並んだ。


「もう……すぐ……終わります……」


言葉を発するのも億劫だった声は呟きに近かった。


「ちょっと!顔色悪いじゃないっ、ここはいいから早く帰って」


「ありがとう……ございます」


言葉を言うと吐き気までこみ上げて来る。


杏梨は口元を手で押さえた。



早く帰らなきゃ……。



杏梨は休憩室に入るとバッグを手にしてふらつく足で店を出た。



* * * * * *



「貴方が杏梨ちゃん?」


歩き始めてから少し行くと大きな黒いバッグを肩からかけた女性に声をかけられた。


「はい……?」


「良かったわ、私は――」


名刺を差し出されて、思わず手が出る。


「……記者さん……?」


なんで……?気分が悪くて頭が働かないよ……。


「貴方、先日事故にあったわよね?」


「えっ!?」


「三木 彩さんの車に」




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