Love Step
「姉貴、誰と話をしていたの?」


「峻!」


身体をビクッと震わせて酷く驚いている。


「峻、いつからそこにいたの?」


「たった今だけど?」


姉のおかしな様子にそう言っていた。


「そう、晴美と話をしていたのよ」


「晴美さんて短大の時の?」


職業柄、姉に友人が少ないせいで、峻はほとんどの友人を覚えている。


「そうよ その晴美」


この話は終わったとばかりに彩は携帯電話を、バッグにしまって肩からかけた。


「じゃあ行ってくるわね」


峻はふにおちないまま姉を見送った。



あの時、晴美さんがどんな友達だったのか思い出していれば良かったのにと、後で後悔する事になる。

姉貴にしつこく聞いていれば……杏梨は傷つかないで済んだかもしれない……。

この時の俺は自分の事に精一杯で姉貴の事を気にする余裕がなかった。



* * * * * *



「杏梨、帰るよ?」


いつのまにか雪哉は受付に来ていて杏梨に告げた。


もうそんな時間……?


杏梨は頭の上にある壁時計を仰ぎ見た。


「え?まだ4時だけど……?」


「頑張りすぎるとまた体調が悪くなる」


ワシントンへ行くのに体調を万全にしておきたいと雪哉は思っていた。


「う、うん……」


杏梨の持っているお客様カードを取り上げると、隣の受付の女の子に渡した。


「これ、よろしくね」


「はい!」


雪哉が頼むと嬉しそうな笑顔で返事が返ってきた。




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