Love Step
「ゆ、ゆきちゃん!お帰りなさいっ!」
雪哉の腕の中でくるっと振り向くと明るく言った。
明るい口調で言ったつもりの杏梨だが、雪哉の眉間が寄った。
「顔色が悪い、目も赤い、ごめん 俺のせいだ」
「ゆきちゃんのせいじゃないよっ!?」
長くすらっとした指がわたしの頬に触れる。
でも、触れていたのはほんの一瞬。
わたしが身を引いたから。
一歩、下がったわたしは逃げるようにキッチンから出た。
杏梨?
キッチンから出て行ってしまった杏梨の後姿を見て雪哉は更に眉根を寄せる。
一線を引いているような杏梨の様子にため息を吐きたくなった。
やっぱり、好きでないと知っていても一晩一緒にいれば嫌だよな……。
彩が店に入って来た瞬間から歯車がずれ始めてしまった。