Love Step
杏梨の電話をもらった峻は驚いているようだった。



しかし、杏梨の沈んだ声で「会ってほしい」と言われて、マンションまで迎えに行くと言ってくれたが、外にいる事を言うと白金台の駅で待っていてと言ったのだった。




杏梨を迎えに車を走らせながらどうして俺に電話をしてきたのか疑問に思った。


雪哉さんと何かあったのか?




指示したロータリーの隅に杏梨を見つけた。



胸元にバッグを抱え俯いている。



ちょうど正面に車を停めると杏梨はパッと顔を上げた。



「家出少女に見えるんだけど?」


車を降りながら峻は言うと今にも泣きそうな顔に笑顔が浮かんだ。



「本当だもん……」



その言葉は峻に聞こえなかった。



「まあ、乗れよ」




「どこに向かっているの?」


走り出して杏梨は聞いた。



「どこって……俺の家だけど?嫌だ?」



ステアリングを握りながら横目で助手席を見る。



「……ううん」



駅から自宅までの7分間、話したのはそれだけだった。



杏梨の沈んでいる様子に峻は声をかけられなかったのだ。



豪邸が立ち並ぶ一画に三木家はあった。



車から降りた杏梨は目の前の大きな家にあんぐりと口を開けた。



「親父たちは今住んでいないから 普段は姉貴と2人っきり」



杏梨の手を掴むと玄関に向かう。



こんな大きなおうちに峻くんと彩さんだけ……?



「ほら、入れよ」


先にスニーカーを脱いだ峻は突っ立ったままの杏梨に言った。



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