Love Step
その時、インターホンが鳴った。


峻は急いで玄関に向かった。


ドアを開けると雪哉が立っていた。


「何もなかっただろうね?」


「あったと言ったら?」


雪哉を入れるために身体をずらしながら言っていた。


次の瞬間、峻は胸倉をがっしりと掴まれた。


「殺すと言っただろう?」


何秒か睨み合いが続く。



「きゃーっ!ゆきちゃん!離してっ!」


彩といる事に耐えられなくなった杏梨はリビングを出た瞬間、叫び声を上げた。


雪哉が峻の胸倉を掴んでいる所を見て驚いたのだ。


杏梨は玄関に飛び降りると、背後から雪哉の身体に抱き付いた。


「離してよ!峻くんは悪くないのっ!」


杏梨の必死の頼みに雪哉は峻を放した。


「心配させないでくれ」


杏梨に向き直ると両肩を掴み言った。



「ごめんなさい……」


大きな瞳がみるみるうちに潤み始める。



「あぁ……杏梨……」


雪哉は頬に指を滑らせ、ぎゅっと痛いくらいに杏梨を抱きしめた。



それを見ていた峻は顔を背けた。



「ラブシーンならここじゃない所でやってよ!」


彩だった。



「彩……君は……」


ゆっくり杏梨を離すと、雪哉の視線が疑問を投げかけている。



「そうよ!仮病なんだから辛気臭い病院にいる必要がなくなったってわけ」



「姉貴!声が大きい!誰かに聞かれたら……」



「ほっといて!早く帰ってよ!これ以上、惨めにさせないで!」



彩は言うと2階へ上がる階段へと消えて行った。



< 330 / 613 >

この作品をシェア

pagetop