Love Step
前を走る車のテールランプを見ているうちに杏梨の目蓋は落ちていった。



25分ほどでマンションの地下駐車場に着いた。



途中で愛する女の子が眠ったのが分かった。



精神的にも、肉体的にも相当疲れているはずで、黙っていれば眠ってしまうと思ったから何も言わなかったのだ。



エンジンを切り、助手席を見ると俺のジャケットの裾に伸びた華奢な手を見つけた。



心が温かくなる。



雪哉の顔にこの上なく優しい笑みが浮かんだ。



杏梨を起こさないように静かにお姫様抱っこをしてエレベーターに乗り込む。



「ん……っ……」


エレベーターの中が眩しかったのか杏梨が身じろぐ。



「……ゆきちゃん」


眠そうな杏梨の声だ。



「もうすぐ部屋に着くよ」


額に唇を当てる。



さっきから暴走気味だな。


杏梨に触れないではいられない自分に苦笑いする。



「あっ!ぉ、降りるっ!」



「いいから動かないで ちゃんとベッドまで送り届けるから眠ってて」


しっかり抱かれて杏梨は降りる事をあきらめた。



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