Love Step
黒いドレスを着て少し大人っぽくなった気分だ。


でも、この姿で街中を歩くのは恥ずかしい。


そう言ったら琴美さんは「友達の結婚式の二次会に行くと思えば大丈夫よ」と言って笑った。


途中まで、琴美さんも一緒だからまあ、良いかと開き直ることにした。


「何時に待ち合わせなの?」


「えっと、7時です」


「じゃあ、お茶する時間はあるわね」


文字盤がキラキラ光るスワロフスキーで飾られた腕時計を見て言う。


腕を動かすたびにキラキラ光って杏梨はきれいだなと思っていた。



琴美は人気のカフェだと言う店に杏梨を連れて行った。


ドレスを着た杏梨は目を見張るくらいきれいで、歩いていても、店の中へ入っても注目を浴びていた。


琴美は表情には出さなかったが、そんな杏梨を憎々しく思っていた。



幸せな気分でいられるのも今だけよ?



「琴美さん、何にしますか?」


「え?あ……私はアイスコーヒーにするわ」


杏梨に聞かれて我に返ると、そばにウェイトレスが立っていた。


「わたしはアイス・カフェオレにします」


メニューをたたみながらウェイトレスに言った。



これから計画している時間合わせのためにお茶に誘ったけど、出来ることならば顔も見たくない相手。


そんな相手と楽しく会話など楽しめない。


琴美は仕方なく、あさってに行く旅行に話をふった。


「オーナーと海外旅行だなんて羨ましいわ」


「え?」


「あ!違うの、オーナーと行くのが羨ましいのではなくて、恋人どうしで海外旅行だなんてその年でなかなか出来ることじゃないから」


「旅行って感じじゃないんです ママと春樹パパに会いに行くのが目的だから それにゆきちゃんはすぐ帰っちゃうし」


「杏梨ちゃんはどの位向こうにいるの?」


「3週間くらいだと思います」


「そう、寂しいわね」


琴美は寂しそうな笑みを浮かべた。




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