Love Step
永遠とも思われる時間が過ぎたと思われたのだが、実際に待っていた時間は30分。



その30分間、雪哉は生きた心地がしなかった。



どうして何も話してくれないんだ?



「雪哉さん、杏梨ちゃんはきっと大丈夫です」



長椅子に座り両手を組み、うなだれた雪哉にめぐみが声をかける。



「どうして歩道橋の階段から落ちたんだ……」



「……たぶん……高いヒールのせいだと思います」



そう言ったのは先ほどまで泣きじゃくっていた琴美だ。



「ヒール?」



「はい オーナーに喜んでもらいたいとドレスアップしていたんです」



確かに最近まで着る物に無頓着だった杏梨は、ヒールなどの高い履物に慣れていない。



救急治療室のドアが開いた。



「ご家族の方、先生からお話があります」



先ほどの看護師がドアから顔を出して言った。




雪哉は救急治療室の中へ入った。



簡素な机を前に白衣を着た若い医師が座っていた。



白いカーテンが引かれていて杏梨はその向こうにいるらしい。



頭部の裂傷で出血したが、MRI検査で以上は見られなかった事、反射的に右手をついた時の前腕部分の骨折、それに全身打撲で体中にあざが出来ている旨を医師に説明された。



思ったより酷い怪我でなく、雪哉の肩から力が抜けた。



「ですが、頭部の打撲は数日様子を見なくてはなりません」



今は以上は見られないが、数日間は安心できないと言う事だ。



「わかりました ありがとうございました」



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