Love Step
ゆずるが帰って数時間後の真夜中に杏梨は目を覚ました。


「気分はどう?」


「……お水……のみたい」


喉がカラカラで話しづらい。



「買ってくるよ 少し待ってて」


雪哉は病室を出るとミネラルウォーターのペットボトルを買い、ナースステーションでストローを貰った。



目が覚めた事を言うと、医師が様子を見に来ると言う。



* * * * * *



「本当に吐き気も頭痛も無い?」


医師と看護師が出て行って後、雪哉は心配でもう一度確認した。



水をストローで一口飲んだ杏梨は小さく頷いた。



「大丈夫だよ 傷口は疼く感じ……薬が効いているみたい」



明るく言う杏梨の言葉が信じられないといった風の雪哉だ。



そんな心配そうな雪哉の顔を見て杏梨は申し訳なくなる。



「強がる必要はないんだからな?少しでも変だと思ったらすぐに言ってくれないか?」



「うん」



頭を少し動かすと黒いドレスが目に入った。



「……ドレス、ダメになっちゃったよね……?」



「ん?あぁ、もう着れないな」



「目が飛び出ちゃうくらい高かったのに……」



「身体が良くなったら買ってあげるよ」


瞳が潤みだしたのを見て雪哉は急いで言った。



「……ううん 当分はいいの」



「いや、退院したらドレスアップして食事に行こう」



「でも右手が使えないよ?」



「食べさせてあげるから大丈夫」


想像するとかなり恥ずかしいシチュエーションだ。



その言葉に冴えなかった顔色が色づいた。



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