Love Step
薬のおかげでぐっすり眠った杏梨の寝顔を見ながら先ほどの話を思い返してみる。



男がわざとぶつかって来た?


わざとぶつかり階段から落とすような事をするだろうか?


……それが事実ならば警察に届けなければ。


……。


何かがおかしい……。


何かが……。





「うぅ……ん……」


杏梨は身体全体の痛みで目が覚めた。



う~ 痛くて寝返りも打てない。



右手は金づちで殴られているような耐え難い痛みが脈打つたびに襲ってくる。



身体全体が痛いのは落ちた時のせいだ。




「おはよう 痛むのかい?」


「ぉ、ぉはよう……帰らなかったの?」



1人だと思っていたから突然顔を覗き込まれて驚いた。



「1人にさせるわけないだろう?」



ゆきちゃんは忙しい人なのに、すごく迷惑かけちゃっている……そう思ったら涙が出てきた。



「ごめんなさい」


「バカだな、泣く必要はないだろう?」


指の腹で目尻を伝う涙を拭いながら、唇に触れるだけのキスを落とす。




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