Love Step
* * * * * *



「何か食べたい物はある?」


「吐き気は?」


「眠った方が良いわ」


などと、久しぶりに会った母はかいがいしく世話をしてくれる。


以前住んでいた家は売ってしまったので、これから数日間はゆずるの家に泊まる。


その準備にゆずるは家に戻り、春樹は本社へ顔を出しに行っている。



病室には母と2人っきり。



薬のせいでぼんやりしている杏梨は横になっていた。



眠りそうな杏梨の邪魔をしないように、貴美香はソファーに座り小説を読んでいた。



しかし、杏梨が気になって小説の内容は頭に入ってこない。



「ママ……ごめんね、迷惑かけちゃって……」



貴美香は本をテーブルの上に置くと、立ち上がりベッド側に来た。



「電話をもらった時は卒倒しそうだったけれど、今は軽く済んでホッとしているわ」



イスに座った貴美香は微笑んだ。



「アメリカに行けなくなっちゃった……」



最初は行きたくなかったが、パスポートを手にすると行きたくなっていた。



それに少しの間だが、雪哉と一緒に旅行気分が味わえると喜んでいたのだ。



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