Love Step
「ゆきちゃん、琴美さん、具合が悪そう 下まで送ってあげて」



杏梨が琴美の具合を心配して雪哉に頼む。



「だ、大丈夫よ 1人で行けるから」



「いや、送っていこう」



雪哉は「すぐに戻ってくる」と言って琴美の後から部屋を出た。



エレベーターを待つ間、琴美は具合が悪そうに手を口元にやっていた。



「大丈夫ですか?」



「え、ええ 大丈夫ですから もう杏梨ちゃんの所へ行ってください」



「顔色が悪いですよ?」



雪哉に顔を覗き込まれて、琴美はとっさに顔を反らした。



エレベーターがやってくると、先に琴美を乗せてから自分も乗る。



中に見舞いに来た夫婦がいて、琴美は2人っきりにならないことにホッとした。



2人っきりでは雪哉に何か言われそうで警戒せざる終えない。



隣に並んだ雪哉は琴美に何も話しかけてこなかった。



頭ひとつ分、高い位置で琴美を黙ってみていた。




確証がない分、何もいわない方がいい。



琴美は雪哉の視線を気にしないように、エレベーターの光る数字を見つめていた。



1階に到着してエレベーターを降りると琴美は雪哉に向き直る。



「失礼します」



「あぁ お大事に」



会釈をしてから受付に行く後姿を見ていた。



本当に予約を入れていたか気になっていたのだ。



「雪哉さん?」



名前を呼ばれ横を向くと、Tシャツにジーンズ姿のラフな格好をした峻が立っていた。


< 385 / 613 >

この作品をシェア

pagetop