Love Step
「あら、本当に婚約したのね?」



ゆずるが杏梨の左手の薬指にはまった指輪を見て意外だったと言う顔をした。



「信じていなかったわけ?」



ゆずるに陸を渡し、雪哉は杏梨を自分の元へ引き寄せた。



「お父さんが冗談を言っているのかと思ったのよ でもこれでやっと安心ね おめでとう 雪哉 杏梨ちゃん」



「安心」の言葉は雪哉に向けてだ。



「ありがとう」
「あ、ありがとうございます」



杏梨ははにかんだ笑みを浮かべながらゆずるにペコリと頭を下げた。



「立っているのもなんだから、座――」



「りくぅ~~~~ 温泉だよ~ じゃぶじゃぶしようか~」



雪哉の言葉など聞いていなく、ゆずるは露天風呂が見える窓に近づいて息子相手にはしゃいでいる。



「とても気持良いんですよ どうぞ 入ってください」



杏梨もゆずるの横に並んで陸の頬をちょこんと指で触った。



「そうね~ 入っちゃおうかしら」



「義兄(にい)さんは?」



「平日なんだから仕事に決まってるじゃない 杏梨ちゃんが心配だから行って来て良いよって健太郎が言ってくれたの」



そこへ再び仲居が現れて、ゆずるのボストンバックを置いていった。



「じゃあ、露天風呂に入らせてもらうから わたしたちの事は気にしないでドライブにでも行って来ていいからねー」



そう言いながらすでに陸の洋服を脱がし始めている。



マイペースなゆずるに雪哉は苦笑いを浮かべるしかなかった。



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