Love Step
「ゆきちゃん!ひどいよ!」



ネイルサロンを出てからさっさと行ってしまう雪哉の背中に杏梨は言った。



雪哉の足が止まり振り向く。



「何がひどいんだい?」



振り向いた顔は不機嫌そうだ。



一瞬杏梨はひるみそうになった。



「だって、病院の予約は1時間後なのに琴美さんのところでお茶させてくれないし、病院の予約だって言ってくれてなかったし」



「病院の予約はここへ来てから取ったんだ 一昨日、のぼせて倒れただろう?気になっていたんだ」



「・・・・・・」



店に来てから予約したのであれば無理もない。



「コーヒーが飲みたいのなら向こうで飲めばいい さあ、行こう」



杏梨はそれでも納得がいかず唇を尖らせた。



それを見て雪哉の顔がほころぶ。



「そんな唇をしているとキスするよ?」



「なん!もうっ!こんなところでっ!そんなこと出来るわけないでしょっ!」



全身の血が顔に集まったみたいに熱くなる。



手でパタパタ顔を仰いでいると、



「雪哉さん」



ゆきちゃんは遼平さんに声をかけられて隅の方へ連れて行かれる。



遼平さんは慌てている様子で一気に話している。



ゆきちゃんが片手を額に置いて小さく首を振った。



なんかあったのかな……。


わたしの名前が出たような……?



少し離れて見ていると遼平さんと目があった。



「お願いします!モデルの子がイメージに合わないんです!」



遼平が拝むように顔の前で両手を合わせる。



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