Love Step
* * * * * *



遼平が雪哉を呼びに行った。



オフィスのドアを叩くと近くにいたのかすぐにドアが内側から開いた。



「仕上がった?」



「はい!」



嬉しそうな顔を見れば納得が行く出来栄えだったに違いないと雪哉は思った。



「杏梨を疲れさせなかっただろうね?」



「えっ……」



まさかそんな言葉が聞かされるとは思っていなかった遼平は一瞬で真顔になる。



「た、たぶん……」



「OK 見に行こう」



雪哉さん、出来栄えの心配ではなく杏梨ちゃんの心配ですか……。



先に階段を降りていく雪哉の後姿を見ながら小さくため息を吐いた遼平だった。



「杏梨」



1人でイスに座っていた杏梨に声をかけるとハッと顔を上げた。



鏡の中の杏梨と目が合う。



「ゆきちゃん」



はにかんだ笑みを浮かべる。



なんとも愛らしい表情に後から来た遼平も見入ってしまった。



しかもさっきまで無表情だった雪哉さんがとろける様な笑顔だ。


はあ~ やってらんねぇ……。


内心、2人が羨ましい。



まあ……昔から杏梨ちゃんには甘い雪哉さんだったから仕方ないか。



遼平はしばらく雪哉と杏梨の会話に邪魔をしないように離れて見ていた。



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