Love Step

引退

「お帰りなさいっ♪」



玄関が開く音にテレビを見ていた杏梨は急いで迎えに出た。



「ただいま」



いつもながら柔らかい笑みで応えてくれる。



「お待たせ、お腹すいた?」



リビングに移動しながら聞かれる。



「うん ごめんね お夕食作れなくて」



「仕方がないだろう?いつも言っているけれど気にしなくて良いんだよ?今日は好きな寿司を買ってきたんだ ちょっと待ってて、着替えてくるよ」



紙袋をそのままテーブルの上に置くと部屋へ行った。



「ゆきちゃ~ん、お茶がいい~?ビールがいい~?」



「ビールを頼むよ」



部屋のドアは少し開いているので雪哉の声がよく聞こえた。



「は~い♪」



キッチンに入り冷蔵庫を開ける。



冷蔵庫の中は食材らしき物は見当たらず、マーガリンや調味料、缶ビールやジュース、麦茶が入っているくらいだ。



「お買い物に行かなくちゃ……」



缶ビールを取り出しながら、冷蔵庫の中身に呆れながら呟く。




ジーンズとTシャツのラフな姿に着替えた雪哉は寿司の包装紙を外していた。



「はい」



缶ビールを渡す。



「サンキュウ」



受け取った雪哉はプルトップを開けてゴクゴクと飲む。




< 447 / 613 >

この作品をシェア

pagetop